執筆者:柏崎和久
株式会社I.T.I、SAKERISE代表取締役
2020/
08/17
かつて日本酒は、郷土色豊かな飲み物だった。
その土地の水と米を使い、気候に合った造り方で醸されてきた日本酒。
醸造の責任者である「杜氏」は、南部杜氏、丹後杜氏、越後杜氏――地域ごとの技術や風土に根ざし、土地ならではの個性ある酒づくりを担ってきた。
そして忘れてはならないのが、その日本酒に寄り添う“酒肴”もまた、土地の文化として育まれてきたということ。地元の食材や味付けが、その土地の日本酒と響き合い、郷土の食文化を形づくってきたのである。
しかし近年、そうした風景に変化が生じている。
味の均質化――。全国どこでも同じような味わいの日本酒が流通するようになり、土地の個性を活かした酒が少なくなってきている。結果として、郷土料理に寄り添ってきた“地酒”が、その役割を果たせなくなりつつある。
効率や合理性を重視してきた酒づくり。だがそれは、エネルギー政策と同様に、今、転換点を迎えているのではないか。エネルギーに「地産地消」が求められているように、日本酒にも、地産地消の思想が今こそ求められている。
土地の恵みを活かす。
自然に寄り添いながら、地域に根ざした酒をつくる。
それこそが、これからの日本酒の未来を照らす光なのではないだろうか。
執筆者:柏崎和久
株式会社I.T.I、SAKERISE代表取締役