COLUMN

2020/

06/30

「ものづくり」の射程

ものづくり日本酒

日本酒造りを行う我々酒蔵は、「ものづくり」の産業である。
すなわち、有形のモノを商品として製造し、世の中に出荷している。

有形の「ものづくり」の大半は、物質に規定された世界の物理的構造を「変容」「加工」する活動である。対して、無形の「ものづくり」とは、新たなカテゴリー・概念の創造である。たとえば、「パン」とひとくくりにされていたものが、「クロワッサン」や「メロンパン」など、新たな概念が誕生することによって、物質的には同じ物であったとしても新たな価値体系が創造される。

しかしながら、新たな価値体系を現実界に具現化・表象する際には、有形の「モノ」が不可欠であり、最終的には物理的媒体にその価値表現形式は帰着する。すなわち、「ものづくり」とは、有限の地球資源の組み換えである。世の中の多くの「ものづくり」は、人間の居るはるか昔から存在する地球資源が基礎である。「ものづくり」とは、地球資源の変容・加工である。

我々人間は、「生の有限性」という絶対不可避の事実で規定される。同時に、物理的な現実的行動で以て世界に働きかける以外の方途がない。原子の集まりで理解すると分かりやすいが、ライプニッツの「モナド」や西田幾多郎の「個物」の世界観である。「モナド」や「個物」が無根拠にうごめく動的な世界において、我々はいかに生きるか。エントロピー増大の法則に従い、堕落と破滅の道に進むのも一つであろう。しかし、果たして我々人間が選択する道であろうか。かつて、哲人達は、人間の本性である「理性」を徹底的に信じた。エントロピー増大の法則に身を委ねるだけの生き方は、「理性」を有す人間の性質ではない。カオス(無秩序)からコスモス(秩序)へと向ける意志と行動、これはまさに理性的人間の本来性の発揮そのものではないか。

「ものづくり」をする我々が造る商品は、元は地球資源そのものである。その原材料を丁寧に扱うこと、すなわち地球資源を整えることは、ものづくりをする者の仕事である。

執筆者:西堀哲也

西堀酒造株式会社蔵元、SAKERISE取締役

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