文化継承者の覚悟
私と「SAKE RE100」のプロジェクトを進めている西堀さんは、六代目蔵元。
最近、知り合った愛知県半田市亀崎町にあるに酒蔵の伊東さんは、九代目蔵元。
二人は共に、酒蔵業界の次期リーダーと言っても良いでしょう。
とにかく、二人とも私と違って地頭が格段に良い。
私が身を置く電力・エネルギー業界にもアタマが良い人は沢山いますが、西堀さんも伊東さんもアタマが良いばかりではなく、行動力が備わっているのが凄いところです。
はたして、何が彼らの行動力の源泉なのだろうか?
と、二人を見ていて感じるのです。
西堀さんの酒蔵は、酒や味噌、醤油を造る近江商人の醸造業がルーツです。
様々な経営難局を乗り越えながら、今に至っていますが、高度経済成長時代と相まって、一時期は約3,000石(一升瓶で30万本)まで生産していたという。
ところが、私が察するに、一時、蔵は廃業近くまで追い込まれただろう。
西堀さんは、大学を卒業後、IT系のエンジニアを経験し、厳しい経営状況にある蔵に戻り、杜氏兼蔵元として日々酒創りに励んでいます。
一方で、伊東さんの酒蔵は、西堀さんの蔵よりも更に古く、天明8(1788)年に創業した伊東合資会社がルーツに当たります。昔は敷地内の船着き場から江戸に酒を出荷し、ピーク時は約8千石(一升瓶で80万本)の年間生産量を誇ったそうです。
しかし、酒蔵は経営不振に陥り、蔵は廃業し酒蔵免許も返上したそうです。
伊東さんも大学を卒業後は上場企業に勤めた後、蔵に戻り、酒蔵免許を再取得し廃業した蔵を復活させ今に至っています。
二人とも、伝承技術として守るべきものを守り、同時に現代と呼応して新たな物事に挑み続けています。西堀さんは、こんなチャレンジをしているのは有名です。
【発明賞を取得した透明タンクを用いた世界初のLED色光照射発酵日本酒の醸造】
そして、伊東さんは、銘酒、敷島を復活させました。
はたして、彼ら二人に共通する行動の源泉は何なのか?
という問いに対する答えは、「歴史を無くしてはいけない!」という覚悟があるような気がします。
単なる挑戦というよりは、二人には使命があるような気がしてなりません。
私のような挑戦ジャンキーなおっさんとは行動の源泉は異なりますが、私は、挑戦者を応援したくなります。
「歴史を無くしてはいけない!」という価値はプライスレスですが、このような価値に共感が生まれる経済が日本文化を守っていくものではないでしょうか。
仏教では、覚悟とは、迷いを去り道理を悟ることだそうです。
私は、日々、悟りの境地を目指しています。
唎酒師:柏崎和久