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杉玉は語る

だんだんと寒くなり、蔵も一段と酒の香りで満ちてきた。続々と搾られる新酒の芳醇な香りは、冬の酒蔵らしさを感じさせる要素の1つだ。新酒の時期、酒蔵で恒例の風物詩となるのが、「杉玉(すぎだま)」だ。ご存じの方も多いかと思うが、新酒のシーズンには新たに杉玉を作り、夏を越え、秋になるにつれて茶色に変色していくその様を見て、お酒の熟成具合を見ていく。緑の杉玉がぶら下げられれば、「新酒ができました!」のサインだ。そして、適度な褐色の杉玉をみて、「そろそろ角がとれて丸い味になってきた頃かな?」などと思いを馳せるわけだ。一説には、お酒の神様が祀られる奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)発祥とされ、江戸時代ころから風習として伝わっているそうだ。 目で見て、味を想像する。リモートワークが一般的になってきたが、お酒造りの世界はもちろんリアルの世界。文字や音声にとどまらず、肌触りや匂いなど、五感を使って感じ、微生物と対話し、醸している。コロナ禍でリアルの大切さを改めて気付かされるこの頃だが、バーチャルの二次元情報では伝達できない空間的コミュニケーションの世界がある。かつての戦国大名達が茶会を行ったのは、手紙だけでは伝えきれない信頼関係の構築のためであるともいわれる。極小の茶室空間で、絵画を鑑賞し、花や道具、食事を介して互いの美意識を共有し「人間」を確かめあったそうだ。酒造りの世界では、言葉を話さない微生物が相手だ。だからこそ、非言語の空間的コミュニケーションがむしろ多いし、感覚を研ぎ澄ますことが重要になる。冬場の酒蔵を、機会があれば一度ご覧になってほしい。夏場の仕込みのない時期とは、雰囲気も違う。ピリッと締まるような、「言い表しようのない」感覚が、そこにはある。あなたが目にした杉玉は、何を語っているでしょうか??西堀酒造 六代目蔵元:西堀哲也

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