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気候と呼応した「洗米」とは

1月は吟醸造りの真っ只中だ。いわゆる高級酒の仕込みが連続し、出品酒等も2月にかけて造ることが多い。「あの麹は・あの酒母は・あの醪は」と常に複数並行で温度が常時頭に浮かびながら気になっている時期でもある。失敗できないお酒が多いため、0.1度の上下が気になってくる大事な時期だ。この時期、冷たい水が体に特にしみるのは、洗米作業だ。従来は、半切桶にネットで手洗い(もみ洗いのようなもの)ですることが主流であったが、現在は写真のような洗米機を使うところも多くなってきた。左下と真ん中の小さな桶を通して、2度洗米が行われ、その後に米が出てくる。(上の写真は、数百キロの酒米を一気に洗う方法)水圧によって、まるで手でかき混ぜているような状態を生み出している。これによって、ある程度の糠を落としていく。麹の場合や、吟醸酒などの場合は、小分けにして最後も手で掛け流しを行う。この例では、10kgずつのお米を、決まった秒数掛け流して最後の糠を取っている。従来は、手でもみ洗いを一斉に行うのが主流であったが、人によって洗い方がどうしてもバラバラになってしまう等が多々あった。確かに、杜氏を呼び蔵人が一斉に来たときは、そのような方式でも問題がなかったが、2021年現在、全国的に杜氏は高齢化し、従来のような季節雇用の方式は困難になってきた。今では「社員造り」が一般的になり、最小限の人数で酒造りをするところが多い。入社数年の浅い醸造歴の人もいる中では、このような道具が品質の安定化・非属人化のために重要になってくる。洗米後は、すぐに水温を一定に合わせた半切桶に漬け、浸漬を行う。最も重要なのは、この「浸漬」だ。酒米の品種や精米歩合(磨き度合い)によって、浸漬の分数は異なる。たとえば、128%の吸水歩合にする、131%にする、などは、工程別にも分ける。タンク1つ仕込むためには、およそ8回の洗米を行う必要があるため、8通りの吸水歩合目標がある。意外に思うかもしれないが、0.1%の差が大きく、秒単位で浸漬時間を調整している。吟醸用のお酒などは、数百キロのお米を5kgずつ、1回3分程度かけて洗ったりするため、1度の洗米作業だけで3時間近くかかったりもする。↑精米歩合55%の酒米を浸漬させた例(吸水歩合130%。白い部分の割合の感覚を記憶する)このように、酒造りは、精米したお米の洗米からスタートする。そして、この「原料処理」という最初の工程が、最も重要であるという人もいる。というのも、ここをミスしてしまうと、後の工程全てに大きな影響があるからである。もちろん、リカバリの能力・技術こそが、経験値の要る職人技になってくる。酒米も、日々気温や湿度とともに状態が変化している。寒い時期に冷たい白米を温かい水で洗ってしまうと「割れ」が発生してしまう。湿度が高ければ、浸漬時間は気持ち長めにする。日々、気候と呼応して作業する、そんな酒造りの一場面のご紹介でした。西堀酒造六代目蔵元:西堀哲也

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