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隠れた「並行複醗酵」とは?

暑い時期に飲みたいお酒は、ビールという方も多いのではないでしょうか。

日本酒を造り販売している私から見ても、やはり夏場はキリッとビールというのは頷けるものですし、美味しいですよね。

日本酒は度数が高いから量は飲めないと言われますが、低アルコールや発泡系の日本酒が最近流行しているのも、この夏場を想定したという一面もあります。

さて、日本酒は世界の醸造酒の中でもトップクラスに度数が高いことで知られているのですが、その理由はある特徴にあります。

突然ですが、日本酒造りの特徴は何でしょうか?

答えは、ズバリ「並行複醗酵」という特徴です。
日本酒の勉強を少しされたことがある方にとっては、耳タコの言葉ですね。

並行複醗酵については、以前もある程度詳しくご紹介しました。
並行複醗酵からみる、相矛盾する動きの難しさ

今回は、この「並行複醗酵」に関して、意外と知られていないマニアックなお話を1つご紹介します。

改めてご紹介しますと、お酒は「①醸造酒」と「②蒸留酒」の大きく2つに分けることができます。

①醸造酒の例が、ワイン、ビール、日本酒などです。度数は数%~20%程度。
②蒸留酒の例が、焼酎、ジン、ウォッカ、ウイスキー、ラム、テキーラ、などです。度数は40%以上など、高いものが大半です。

そして、教科書的に言うと、

①ワイン:単発酵(ブドウ(糖)→酵母で発酵)→蒸留→②ブランデー
①ビール:単行複発酵(麦芽→糖化→発酵)→蒸留→②ウイスキー
①日本酒:並行複醗酵(麹→糖化&発酵)→蒸留→②焼酎

とザックリ整理されます。
※詳しくはググると色々わかりやすい解説が出てきます

そして、日本酒は「並行複醗酵」を体現する代表格である!と言われます。

しかし、ここで登場した②蒸留酒のうち、焼酎以外にも「並行複醗酵」が行われるお酒があることをご存知でしょうか?
実は、このことはなかなか一般的なテキストなどでは紹介されていません。

ズバリ、ウイスキーは厳密にはその発酵過程で「並行複醗酵」を辿っているのです。

ビールを蒸留してウイスキー、という整理。
これは実は大雑把なのです。
私も造っていて、改めて実感しているところです。

「糖化→発酵」を明確に区切るビールは、糖化工程の最後に煮沸してホップを投入し、酵素を完全に失活させます。(だから、糖化は完結し、単行複発酵なのです)

しかし、ウイスキー造りにおける「糖化→発酵」の流れでは、実は酵素を完全失活させない温度(65℃前後)で次に進むのが一般的です。 

酵母の量が圧倒的に多く、発酵期間が短いのであまり着目されることは少ないのですが、糖化させた麦汁をタンクで発酵させるときには、まだ酵素も生きており糖化と発酵が同時に進む「並行複醗酵」が実現されています。
もっといえば、他にも乳酸菌なども多数生きており、とても複雑な(ある種怖い?)環境になります。

私の蔵では、この夏、清酒酵母でウイスキー造りにチャレンジしているのですが、ここがとても面白く、同時にとても複雑でチャレンジングな領域です。
数少ない業界の論文を紐解き、色々類推して試行錯誤しています。

冬場のいつもの日本酒造りでも、改めて「並行複醗酵」に新鮮な視点で向き合えそうなほど、連日、糖化と発酵に頭を悩ませている、今日この頃です。

西堀酒造六代目蔵元:西堀哲也

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