メインコンテンツにスキップ

日本酒の「飲み頃」

お酒には、「飲み頃」というものがある。「今が一番美味しい!」もしそう思っても、お客様の手元に届くときには厳密には全く同じにはなるとは限らない。そこに一種の虚しさも感じてしまうものだ。だから、秋の「ひやおろし」などのように、飲み頃をあらかじめ想定する。たとえば、搾ったばかりの新酒は、まず間違いなく美味しい。けれども、お酒が市場にでるまでのわずかな期間で、生まれたての味わいから想定外に変わってしまうこともよくある。「今だ!」と思っても常に過去のものとなる時間のように、お酒も見た目、点のように静止しているように見えるが、川の流れのごとく、時とともに、刻々と味わいは変化している。※瓶燗火入の様子できるだけ味の変化を最小限に食い止めるために、日本酒は「火入れ」というものが行われる。生酒の状態だと、時間や温度とともにお酒の味わいの変化が激しくなる。そこで、65度程度まで加熱し、酵素を失活させることで安定した酒質に整える。これが、いわゆる「火入れ」酒だ。生酒は「要冷蔵」と表記されていることがほとんどだが、一般に常温保存されている大半のお酒は、基本的には「火入れ」酒だ。食物は通常、時間とともに腐敗していく。しかし、お酒には消費期限がない。これは、生鮮食品等とは異なる、お酒ならではの特性だと思っている。現代は、めまぐるしく世の中が移り変わっている。最速、最短、効率と能率。あらゆるものが高速回転している。その世相は、日本酒の世界にも現れていると思う。生鮮食品のように、いかに日本酒をフレッシュな状態でキープするか。即出荷、即消費。フレッシュな生酒は、開栓後の酒質の変化は激しい。だから、できるだけ早くボトルを空にすることが是とされる。いつの時代もそうであったかというと、もちろん、そうではない。昔は、製造から少なくとも1年は寝かせないとお酒ではないという時代もあった。今でも、平均2年半、早くてもひと夏は寝かせている某酒蔵があるのは、有名な話だ。嗜好も、知らず知らずと世相を反映しているのではないか。お酒の味は、どんなに冷蔵していても、必ず変化する自然も、常に変化し続けている。瓶の中には、時間が詰まっている。無常そのもの、川の流れのように移ろい続ける、永遠の"現在"がそこにある。二度と出会えない、「今」の味。ちょっとゆったりしたい、そんなときは「火入れ」タイプのやや寝かせたお酒がおすすめだ。日々舞い込むメールやSNSの情報の嵐から一旦距離を置き、昔ながらの普通酒を熱燗でゆったりと嗜む、そんな日もあって良いと思う。西堀酒造六代目蔵元:西堀哲也

ショッピングカート

カートは現在空です
ショッピングを続ける
お問い合わせ頂きありがとうございます。 購読ありがとうございます 再入荷のお知らせをします The max number of items have already been added There is only one item left to add to the cart There are only [num_items] items left to add to the cart