私は、唎酒師(ききざけし)です。
簡単に言うと、日本酒のソムリエです。

和食に合う日本酒、2回目は、今が食べ頃、日本の川魚の代表である「アユの塩焼き」を紹介させていただきます。
私の自宅がある宇都宮から少し上流の鬼怒川では、今まさに、全国からアユ釣り職人が訪れています。
この季節、私は、棚場で「アユの塩焼き」を食べることを至福のイベントとしています。


(ご近所での「おもてなし」の写真、鬼怒川の河原にて)

アユの食べごろは、6月~8月であり、この季節はアユが藻類を旺盛に食べることで、アユの匂いはキュウリやメロンやスイカの皮の香りがします。
特に、梅雨明けのアユは最も香りがのっています。

最近は、河川の環境の変化で、天然のアユが少なくなっていると聞きますが、養殖が盛んであり、人工ふ化させたアユを上流で放流したりするなどで天然に近いアユとして食卓に登場しているようです。

さて、こんな「アユの塩焼」、どんな日本酒が合うのでしょうか?

基本的に淡白な料理には、吟醸香の香りがある「爽酒」が合うと言われており、唎酒師の教科書では、「爽酒」を合わせることが王道のようです。
おそらく、川魚の泥臭さを切れの良い辛口の酒が流してくれるような後味の良さが強調されるからだと思います。
私は、いろいろな合わせ方を試してみましたが、確かに、辛口の「爽酒」が一番です。
甘い香り系の大吟醸系だけは、お勧めできません。

「アユの塩焼き」を自宅で楽しめば、田舎に行けなくても新緑の眩しさを思い出すのではないでしょうか。
切れの良い「爽酒」と香魚で至福の時が味わえると思います。


(ご近所での「おもてなし」の写真、鬼怒川の河原にて、炭火で焼きます)

「アユの塩焼き」は、昔から「お・も・て・な・し」の場で活躍してきた料理です。
「お・も・て・な・し」の文化が生まれたことは、そこに日本酒の存在があったからこそ、酒宴の席、いわば会席料理も生まれたのです。
日本酒は単なるアルコール飲料ではなく、文化を紡ぐ存在であるのです。

いま、コロナ禍で、「飲食店にお酒は必要ないのでは?」との日本酒の存在意義まで問われているように思います。

和食と日本酒の相性を楽しんでいただくことが、食卓を囲んだ人々に笑顔をもたらし、日本酒業界のためにも、日本の食文化のためにも役立つのかと感じています。
また、こうして書き溜めておけば、和食と日本酒の相性を楽しむデータベースになるかも知れません。

唎酒師:柏崎和久