日本産酒類」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
業界では、国税庁などの公的資料でもよくこの言葉が登場します。

日本で造られた酒のことを指し、日本酒や焼酎といったいわゆる「和酒」だけでなく、
ビールやワイン、ウィスキーなどの洋酒も含めた、日本国内で造られたお酒全般のことを指しています。

日本は異文化と共生してきた、独特の文化であるとも言われます。
よい例が、「神仏習合」思想で、いわば神社と寺院が混合した状態です。

6世紀に仏教が伝来してから明治維新に至るまでの約1300年間、日本では神社と寺院が混合して共存していました。
平安時代には、多くの神社に「神宮寺」と呼ばれる、神社の中のお寺がありました。
寺院の境内に神を祀ったり、逆に神社の境内に仏像があったり。

明治期には、神仏分離、廃仏毀釈が行われて神社と寺社は切り離されるような状態になりました。
私達は今の風景しか見ることができませんが、日本の歴史の大半の期間で、
神社と寺院が混合した神仏習合の状態が続いていました。

それでは、お酒の世界ではどうでしょうか。

昔は、ご想像の通り、日本酒がほぼ百パーセントの生産でした。
現在は、多種多様なお酒が国内で造られています。

欧州が本流のワインやビールであっても、日本の水と原料で醸すからこそ、固有の味わいになるわけです。
もし、水も原料もすべて本場欧州のものを使い、クリーンな環境で製造すれば、限りなく本場の味を再現できるでしょう。
もちろん、日本で造る「洋酒」は、本場の味を忠実にコピーすることが目的ではないはずです。

いま、世界各国でクラフト系酒類が興隆しています。
これは、その国・土地(空間)におけるメタモルフォーゼそのものです。(注)

日本であっても、ワインもビールもウィスキーもラムも造られて全然良いと思います。
もちろん、本場本流の精神を尊重した上で、その国固有の特徴を出していけばよいのではないのでしょうか。

だから、「“日本産”酒類」であり「“ジャパニーズ”◯◯」なのです。
「異」を尊重しつつ共生する、そんな在り方が必要なのではないかと思います。

場所(空間)だけでなく、時代(時間)とともに、味も製法も変わります。
“乱れた世では甘口の酒が好まれ、太平の世では辛口の酒が好まれる”とも言われるように、
空間ならずとも、時代(時間)においてメタモルフォーゼしているのです。

昨今のニュース等でも御存知の通り、ますます脱酸素社会への動きが加速してきました。
時代とともに、酒造りの世界にも再エネ醸造があたりまえの時代が来るでしょう。
再エネで造るSAKEは、時代とともにある新たな酒造りのあり方になると思います。

とはいえ、土台となる国内需要が低迷し、コロナ禍も相まった厳しい現状では、再エネ導入は二の次三の次になってしまっています。
全国に酒蔵は1400程ありますが、その大半は地方の小規模酒蔵・地酒メーカーです。

国内洋酒メーカー様では再エネシフトの取り組みが進む例もありますが、
日本酒に関しては、まだまだ動きとして進んでいないのが現状です。

アサヒグループ、国内飲料業界で初の「RE100」参画

SAKE RE100では、小規模酒蔵であっても再エネシフトに着手できるような構想を描いています。

(注)メタモルフォーゼ(ドイツ語: Metamorphose)は変化、変身。生物学でいう変態の意。

西堀酒造六代目蔵元:西堀哲也